『七色いんこ』(手塚治虫)
七色いんこ (1) (少年チャンピオン・コミックス) (1981/09) 手塚 治虫 商品詳細を見る |
初出:1981.3.20.〜1982.5.16. 週刊少年チャンピオン(秋田書店)
単行本:講談社手塚治虫漫画全集341〜347巻/チャンピオンコミックス全7巻/
秋田文庫全5巻
備考:秋田文庫版は雑誌掲載順に全話収録。他は未収録エピソードあり。
チャンピオンコミックス版には戯曲の解説あり。
おすすめ度:★★★★★
自分が持ってるのはチャンコミ版です。解説ページも結構楽しい。
未収録の話が載ってる巻だけ、古本屋で秋田の豪華版を買いました。
(文庫版と収録順・収録作品は全く一緒。カバーイラストは異なる。)
基本的に秋田文庫はカラーページがそのまま収録されてるのがおいしい。
一話完結形式で、エピソードのほとんどが実在の戯曲を下敷きにしています。
これの影響で中学高校と演劇部だったので個人的に思い入れが深いです。
代役専門の舞台役者かつ泥棒の七色いんこ、彼を追う女刑事千里万里子、
いんこの奇妙な相棒玉サブロー。
スターキャラはゲストとしての出演がほとんどですが
(下田警部は万里子の父役で準レギュラー出演)、
この2人と1匹のキャラクターが大変に魅力的。
いんこと千里の衣装なんかも、芝居がかっていて可愛いです。
もともと芝居がかったオーバーなアクションが手塚作品の特徴の一つでも
あったわけで、演劇との相性はすごくいい作家なんですね。
宝塚に影響受けたりしてるんだからそれも当然といえば当然ですがw
一方でママー演じるホンネ一家の登場や、
いんこが手塚治虫本人と会話をするエピソードなど、
シュールでメタ的な演出も目立ちます。
バラエティに富んでいて飽きさせません。
「終幕」ではちょいちょい張られていた伏線が見事に回収され、
作品を通して大きな軸となっていたものが最後にようやくわかるという仕掛け。
マンガを読む楽しさを存分に味わうことのできる作品です。
発表当時は「『ブラック・ジャック』の二番煎じだ」という意見が多かったらしく、
不人気ゆえの打ち切りのようでもあるんですが、
作品の質としては『B・J』とは全く別だと思います。
読みやすさでは『B・J』に少し負けるかもしれませんが、
設定や演出のマニアっぽさがオタクのツボを刺激しますw
もっと多くの人に読んでほしいなあ。