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『罪と罰』(手塚治虫)

罪と罰 (手塚治虫漫画全集 (10))罪と罰 (手塚治虫漫画全集 (10))
(1977/06)
手塚 治虫

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久々に初期作品について書いてみる。

ドストエフスキーの超有名な同名小説のマンガ化作品です。
今と違ってタイアップのタの字もない時代のことなので
完全に手塚氏の趣味によるチョイスです。
描きおろし単行本という媒体がどれほど自由度の高いものだったのかが
うかがい知れるなあ。題材が題材だけに子供向けの雑誌とかじゃ
うまいこと描ききれなさそうだもの。

私自身原作を読んだことがない(というか読もうとして最初の数十ページで挫折した)
ので、ドストエフスキーの小説をどんなふうにアレンジしているのかについては
語ることができないのですが、現在「アクション」で連載中の『罪と罰』(落合尚之)で
いくつか同じようなエピソードが出てきているので、大筋には沿っているんだろうなーと
思います。
(ちなみにこっちの『罪と罰』も相当面白いです。原作ちゃんと読みたいなあ…)

クライマックスが原作と大きく異なる展開になっているらしく、
そこもたぶん見どころのひとつなのだと思うのですが
ストーリーよりも特筆すべきは実験的な表現技法です。
同じコマの羅列やコマの形の変化といったマンガ文法上の実験を
繰り返し行い、主人公の内面描写を外側から掘り下げていて、
今読んでも十分に刺激的です。

赤本時代末期の発表ということで絵柄などもだいぶ見やすく整っており、
初期作品の中では多くの人に薦めることのできる作品です。

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所用で地元の中央図書館に行ったら、併設のホールで高校演劇部の大会の
地区予選が開催されていました。
出身校の演劇部はつぶれたと聞いてたのに出場校の中に入っていたので
おや?と思ってちょっと覗いていったら顧問に会いました。

うちの演劇部は自分の代から数えて4つ上が全国大会に出場したという
一見輝かしい歴史を持っていたのですが、3つ下の代を最後に一度潰れて、
今は部員3名。それが全員3年生とのこと。
無謀にも野田秀樹にチャレンジする気骨のある部員らしく、
昔から生意気でやたら態度がでかかったうちの高校らしいなあと
ちょっと微笑ましく思ったりもしたのでした。久々に演劇やりたくなっちゃった。