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バンブツルテン

観たり読んだり聴いたり行ったり考えたり

『同級生』『卒業生』(中村明日美子)

同級生 (EDGE COMIX)同級生 (EDGE COMIX)
(2008/02/15)
中村 明日美子

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卒業生-冬- (EDGE COMIX)卒業生-冬- (EDGE COMIX)
(2010/01/28)
中村 明日美子

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卒業生-春- (EDGE COMIX)卒業生-春- (EDGE COMIX)
(2010/01/28)
中村 明日美子

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最近モーニングで始まった『呼出し一』がとても好きです。
まだ2話か3話分しか載ってないというのに、キャラクターが軽快に動く様や
ふんわりとした物語の進み方と散りばめられた小ネタの独特なテンポ、
何よりも惚れ惚れするような描線と女子の可愛らしさにやられています。
『Jの総て』シリーズ?のイメージが強く(未読ですが)、
アクの強い少年愛(BLではない)作品を描く人だと思っていたので
これは嬉しい誤算でした。モーニングに載ってても何の違和感もないような、
ノーマルに面白いマンガも描く、懐の広い人なんだなーと。

そんなわけで是非この人のほかの作品も読んでみたいと思っていたところに、
『卒業生』のコミックスが発売になり、目ぼしい本屋ではどこでももりもり平積みになっている。
これを逃す手はない!とばかりに、前身にあたる『同級生』と併せて購入しました。

男子校という空間で生まれた、大人になる前の「男の子」たちの恋愛を
ゆっくりと、じれったく、温かく描写した作品。
その雰囲気は70年代の「ギムナジウム」ものに近く、
やはりこの人は「BL」じゃなく「少年愛」を描く人だったなあという認識を確かなものにしました。
読者としてそれらの作品にたくさん触れてきたんだろうなというのを感じさせられます。

まともに根拠を探したわけじゃないのでほぼ推測で書きますが、
おそらくかつて24年組世代の諸先生が「少年」という素材を好んだ理由は、
(もちろん単純に神秘的で美しい雰囲気になるからってのもあると思いますが)
恋愛の話をするとなれば避けて通れない「性」を描こうと思ったときに
それを「いかがわしいもの」「教育上よろしくないもの」として叩く空気が
まだまだ世の中に蔓延していて、それを回避するのに便利だったためではないかと思います。
(男女よりは男同士の方がまだ「マンガの話だから」と切り捨ててもらいやすかった、みたいな)

しかし80年代以降、ラブコメブーム→ロリコンブームを経て
有害コミック騒動なんてものさえ起きる中で、
もはやマンガで性を描くことがタブーだなんて風潮はなくなり、
女性向け作品や低年齢向けの作品にもどんどん性描写が持ち込まれ、
かつては描くとなれば、それも読者が「少女」であるならばなおさら
真剣に挑まなければならないものであったはずの「性」が、
当たり前のものとして、悪く言えば安っぽく扱われるようになってきている。

そんな今の状況になんとなく疑問を持つ者にとって、
「性」を軽視しすぎないこの作品のスタンスはすごく落ち着きました。
こういうじれったさをきっちり描いてくれる人は今は本当に少ないと思う。
(あえて「性の話に進む以前の思春期の純愛」をテーマに据えて描いている少女マンガ群は
それはそれで別のカテゴリーだと私は思っています)

この作品が「BL」じゃなくて「少年愛」だなあと思ったのは、
そういう面も含めて恋愛というテーマの扱い方がクラシックで、
今時の「ボーイズラブ」とはちょっと違うなあと感じたためです。

まじめに、ゆっくり恋をする、美しい少年たち。
卒業して大人になった彼らは、きっと最終的に結ばれはしない気がする。
そんな儚さも含めて、ドキドキして、日常を忘れられる、素敵な作品です。