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バンブツルテン

観たり読んだり聴いたり行ったり考えたり

『ウツボラ』(中村明日美子)

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(2010/06/09)
中村 明日美子

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(2012/05/17)
中村明日美子

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ウツボラ』(中村明日美子太田出版)、読み終わりました。
3回読み返して、自分の中で整理すると、こういうことなのかな?と思います。
(以下ネタバレあり)








2回読み返した時点では、こうかな?と思いました。


秋山富士子(=藤乃朱、『ウツボラ』作者)、溝呂木に大量の手紙や小説を送り付ける

秋山富士子、三木桜(=横領容疑のOL)と図書館で出会う

富士子、三木桜に『ウツボラ』を見せる

三木桜と富士子が別々に『ウツボラ』を投稿

三木桜、「藤乃朱」として出版社のパーティーで溝呂木と会い、一夜を過ごす

富士子、整形。三木桜とまったく同じ容姿に。三木桜は髪を切る

溝呂木、整形した富士子と何度か会う

三木桜、投身自殺

富士子、「三木桜」として溝呂木と出会う

が、こう読むと以下の疑問点が残ります。
・飛び降りた人物(=三木桜)の持っていた携帯電話の名義が「秋山富士子」である。
・最後の溝呂木と「三木桜」のやりとりが不可解。
(「君は『ウツボラ』の作者じゃない」「僕は『ウツボラ』の作者には一度きりしか会っていない」)


そこで、こうかな?と思いました。

秋山富士子(=藤乃朱、『ウツボラ』作者)、溝呂木に大量の手紙や小説を送り付ける

秋山富士子、三木桜(=横領容疑のOL)と図書館で出会う

富士子、三木桜に『ウツボラ』を見せる

三木桜と富士子が別々に『ウツボラ』を投稿

三木桜、「藤乃朱」として出版社のパーティーで溝呂木と会い、一夜を過ごす。
その後、溝呂木と「藤乃朱」(三木桜)は何度か肌を重ねる

富士子、整形。三木桜とまったく同じ容姿に。三木桜は髪を切る

溝呂木、整形した富士子と一夜を過ごす
(=「僕は『ウツボラ』の作者には一度きりしか会っていない」)

富士子、投身自殺

三木桜、溝呂木と出会う

こう読むことで、病院での三木桜の独白が理解できます。

横領容疑で追われ、整形し、富士子に接近した三木桜。
やがて富士子も三木桜との倒錯的な関係に嵌っていき、
最終的には三木桜よりも遠くに、「あっちの世界」に行ってしまい、
自殺することで溝呂木の作品となることを目指す。

三木桜は、富士子が死を選んだ理由が知りたかった。
また、思いがけず自分の半身のようになった富士子を喪った哀しみ、罪悪感もあった。
人間らしい感情の揺れを、富士子の死によって取り戻したのかもしれない。

さらに富士子の兄の登場、富士子が借りていたアパートのシーン、病院のシーン等で
読者は「三木桜」=富士子という確信を強めるけれど、実はそれを証明するものは何もない。
富士子の兄と三木桜は直接会ってはいないし。

また、死の直前の「あなたにも内緒にしていた部屋があるの」という電話。
これは三木桜から富士子への電話で、この「部屋」が後に「三木桜」と溝呂木が訪ねる部屋であると
思わされるけれど、
これが富士子から三木桜への電話で、この「部屋」は富士子が借りていたアパートであり、
「あなたに遺したもの」というのが富士子の溝呂木コレクション、という読み方をすれば辻褄が合う。

ただ、そうすると三木桜と溝呂木が三木桜の部屋を訪ねるシーンがちょっとよくわからない…
ということになってはしまうんですが。

そんなわけで、まだ消化しきれていませんが。
本格サスペンス的な謎が謎を呼ぶ展開や、作家の業という悲痛なテーマに加え、
藤乃朱と三木桜の容姿を筆頭にマンガでなければ表現できない部分も多々あり、
マンガの可能性をまた一つ垣間見たなあ…という感想もあります。
明日美子先生はやはり凄い。

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2巻をもう一度ざっと読み直して、ちょっと書き直しました。