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バンブツルテン

観たり読んだり聴いたり行ったり考えたり

2013年を振り返る〜マンガ編

続いて、今年読んだマンガを振り返る。
Twitter企画「#俺マン2013」に選んだ作品、今回は外したけど印象深かった作品についてつらつらと。

吾妻ひでお失踪日記2 アル中病棟』(イースト・プレス 全1巻)

失踪日記2 アル中病棟失踪日記2 アル中病棟
(2013/10/06)
吾妻ひでお

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個人的に今年のベスト1はこれ。
凄絶な内容を淡々とユーモラスに描いているという点は『失踪日記』と同じ魅力なのだけど、
大ゴマで見せるシーンの抒情性とか、病棟の人々の群像劇でもあるところとか、
あと単純にボリューム的にも前作を凌ぐ読み応え。圧倒的な情報量なのに、ぐいぐい読めてしまう。
吾妻先生の描線と、作中に漂う浮遊感が好きで、いちファンではあるのですが、
それを差し引いても本当にすごい作品だと思う。

■梶本レイカ『高3限定』(ふゅーじょんぷろだくと 全3巻)

高3限定(POE BACKS Babyコミックスextra)高3限定(POE BACKS Babyコミックスextra)
(2012/05/24)
梶本レイカ

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Twitterで見たおすすめコメントが気になって購入したら凄かった。
BLのレーベルから出ていますが、これははっきりとサスペンス・ミステリー・ホラー・ファンタジーの系譜にある作品。
1巻の帯のコピーこそBLっぽさを若干漂わせているけれども、あれにつられて読むと後悔するでしょう。
流麗で個性(アクともいえる)の強い画風と難解なストーリーから、
読後感は『ウツボラ』(中村明日美子)に似ていると思ったなー。
自分の中の「?」を解消すべく、何度も何度も読み返してしまう感じ。
ラストでカタルシスはあるものの、読んだ者の頭と心に大きなしこりを残すマンガです。
あと、コマ運びや演出もかなり前衛的でいろんな挑戦がされていて(きっと無自覚にやっているんだろうけど)
マンガ表現としてもとてもスリリング。
全体的にダークでグロテスクでかなり酷い描写がありますが、大丈夫な方は是非挑戦してみてほしい。

小原愼司『地球戦争』(小学館 既刊2巻)

地球戦争 1 (ビッグ コミックス)地球戦争 1 (ビッグ コミックス)
(2013/03/29)
小原 愼司

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古き良き…と言ってしまうと語弊がありそうだけど、古典へのオマージュに溢れた伝統的な良質のSF作品という印象。
手塚藤子石ノ森にSFを教えられた者としてはたまらないものがあります。
先が読めない展開、作品全体を覆う緊迫した空気感、ぞっとするような「三本足」の造形がすばらしい。
1月末に3巻が発売予定ですね。

有間しのぶ『リバーサイド・ネイキッドブレッド』(祥伝社 全1巻)

リバーサイド・ネイキッドブレッド (Feelコミックス)リバーサイド・ネイキッドブレッド (Feelコミックス)
(2012/12/08)
有間 しのぶ

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これ出たの2012年だったのね。
有間しのぶさんは、現在「ビッグコミックオリジナル増刊」にて連載中の『その女、ジルバ』で知って
いいなと思った作家さんなのですが、ほかの作品も読んでみたらとても良くて、出会えてうれしいです。
4コマ形式で繊細な人間模様であったり思春期の心の機微だったりを細やかに描いていて、
読み進めやすいけど切なくてあたたかいものが残る作品です。
『その女、ジルバ』(小学館・既刊1巻)『ホテルポパン』(講談社・全2巻)もおすすめ!

その女、ジルバ 1 (ビッグコミックス)その女、ジルバ 1 (ビッグコミックス)
(2013/02/28)
有間 しのぶ

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ホテルポパン(1) (KCデラックス)ホテルポパン(1) (KCデラックス)
(2012/12/13)
有間 しのぶ

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■奥田亜紀子『ぷらせぼくらぶ』(小学館 全1巻)

ぷらせぼくらぶ (IKKI COMIX)ぷらせぼくらぶ (IKKI COMIX)
(2013/11/29)
奥田 亜紀子

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普通の中学生と、ちょっと普通じゃない(容姿とか身体的なことが理由で浮いてしまっている)中学生たちの
ヒリヒリ痛い現実を、抉るようなリアルなストーリーと抑制の効いた画風で表現していて、
これはかなり読んでいてつらくなったけど、とても優しくあたたかく切ない結末に安堵しました。
結構尖った描写が見られるけど、感性に寄りすぎずしっかりお話を読ませる作風は好みです。
学生時代にクラスで浮いていた自覚のある人は感じるものがあると思う。

大今良時『聲の形』(講談社 既刊1巻)

聲の形(1) (少年マガジンコミックス)聲の形(1) (少年マガジンコミックス)
(2013/11/15)
大今 良時

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読み切りが雑誌掲載された時点ですごく話題になっていました。
私は1巻が出てようやく読んだのですが、なるほどこれは騒がれるわ…と納得。
万人に受け入れられやすそうな読みやすく整ったかわいらしい画風で、
しかも少年誌というフィールドで、普通なら敬遠してしまいそうな社会性のあるテーマに挑んだ意欲作…
とか言うとベタ過ぎるけど、でもこの作品は本当に、そういう意欲がまず賞賛されるべきじゃないかなー。
社会的なテーマを個人と個人の、少年と少女のお話として成り立たせるのがとても上手いなと思う。

コージィ城倉『チェイサー』(小学館 既刊1巻)

チェイサー 1 (ビッグコミックス)チェイサー 1 (ビッグコミックス)
(2013/09/30)
コージィ 城倉

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手塚治虫のようになりたくてなりたくてたまらないけどそれを素直に言えない」という、
めんどくさい性格の同時代のマンガ家の話。
トリッキーな作品ですが、手塚ヲタとしてこれは悔しいけど面白いと言わざるを得ない!

■四宮しの『魔女と猫の話』(少年画報社 全1巻)

魔女と猫の話 (ねこぱんちコミックス)魔女と猫の話 (ねこぱんちコミックス)
(2013/03/11)
四宮 しの

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ねこぱんちコミックス!
おすすめの声を聞かなければノーチェックのままだったであろう、今年の収穫でした。
とても上質な、「猫」というモチーフが最適な活かされ方をしているファンタジーです。
優しく柔らかく暖かいメルヘンの世界で共生する猫と少女たちの物語はとても心地良い。

森泉岳土『祈りと署名』(エンターブレイン 全1巻)

祈りと署名 (ビームコミックス)祈りと署名 (ビームコミックス)
(2013/11/25)
森泉岳土

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ほとんど読んだことはないんですがイメージ的にB・Dのような、むしろ絵本のような雰囲気の作風。
「水で描いている」という画風は個性の塊です。
コマが割られていて、フキダシがあるから、ギリギリ「マンガ」の体裁になっている…というような。
大人の寓話を、その空気も含めて描くにはこのやり方が合っているのでしょう。
物語の中に連れて行かれる感は凄いです。

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上に挙げたのは「出会い」という意味で今年読めてよかった作品たち。
ほかにもたくさんいいマンガありました。タイトルだけ挙げると、

・池辺葵『どぶがわ』(秋田書店
・宮崎夏次系『僕は問題ありません』(講談社
小原愼司トニーたけざき『星のポン子と豆腐屋れい子』(講談社
武富健治『惨殺半島赤目村』(泰文堂・既刊1巻)

あと、今後の動向を見てから評価したいなと思っているのが
・野田彩子『わたしの宇宙』(小学館・既刊1巻)
売野機子『MAMA』(新潮社・既刊2巻)
・真造圭伍『みどりの星』(小学館・既刊3巻)

といったところでしょうか。

それから、今年は白泉社の40周年記念愛蔵版シリーズだったり、『極東学園天国』新装版であったり、
魔人探偵脳噛ネウロ』文庫版であったり…という新装版ラッシュに踊らされた年でもありました。
あと、ネウロ文庫化もその一端ですが、『暗殺教室』の大ブレイクは本当に嬉しく思います。
作家・松井優征も一度じっくり考えてみたい。彼は藤子・F・不二雄の遺伝子を持っていると思うんだよなー。

そんな2013年でした。来年もたくさん良いマンガと出会えますように!