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『来るべき世界』(手塚治虫)

来るべき世界 (1) (手塚治虫漫画全集 (45))来るべき世界 (1) (手塚治虫漫画全集 (45))
(1977/10)
手塚 治虫

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初出:1951.1.10 不二書房
単行本:講談社手塚治虫漫画全集45・46巻/角川文庫
おすすめ度:★★★★☆

御大・手塚治虫の初期作品です。
ロストワールド』『メトロポリス』と並んで「初期SF3部作」と呼ばれます。
画像は全集版ですが自分が持っているのは角川文庫版です。
レトロな装丁と、カバーをめくるとカラー表紙が出てくる仕掛けが良い。
現在出回ってる文庫版はカバーイラストがケン一だけで寂しいですね。

多彩なキャラクターが画面狭しと動き回っていて楽しい。
ロックの性格の2面性といいミッチイの一人二役といい、
手塚氏のお家芸スターシステムの初期完成形といえるんじゃないかと思います。
ヒゲオヤジはもちろんケン一のおじさんという役柄だし。
いくつものエピソードが矛盾なく繋がりあう構成も見事。
クライマックスでレドノフとノタアリンが和解するシーンは、
個人的に手塚名シーンベスト10に入るほど好きです。

今読むと「ねーよwww」とツッコみたくなる設定もいくつかありますが、
そもそもマンガにリアリティを求められていなかったのだということを考えれば、
この壮大で伏線だらけのストーリーの、時代の先取りっぷりに驚かされます。

初期作品の中では読みやすい方かと。
ただ、手塚作品を読み慣れている、もしくは50年代以前のマンガに
慣れ親しんでいる人でないと少し読みづらいと思います。