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『アマニタ・パンセリナ』(中島らも)

アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)
(1999/03)
中島 らも

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いくら「ダメ、ゼッタイ」「人間やめますか」と脅されて育っても、
クスリに一片の興味も持ったことがない人というのは
滅多にいないんでないかと私は思っております。
たしかにそれが人間にもたらす害悪についての知識は
なんとなく、それでいてやたら濃く教え込まれた気がするので
やってみようとはなかなか思わないものですが
(そもそも普通に生活してたらそんな機会がないだろうし)
でも、一瞬でも疲れが吹き飛ぶとか、万能感がみなぎるだとか、
そういうことを聞けば誰しもちょっとは「へえ…」って思うものでしょう?

そんな、ちょっとした興味を満たしてくれる本のひとつです。
サブカル屋で売ってるドラッグ本と違うのは、
これが稀代のエンターテイナーによるエッセイであること。

私は小説『今夜、すべてのバーで』でらもさんのファンになったので
小説ではこの作品が一番思い入れが強いんですが、
数多あるエッセイの中では『アマニタ・パンセリナ』が
かなり好きなほうに入ります。
(『心が雨漏りする日には』『休みの国』なども好き)

らもさん自身のクスリ経験を中心に、一般的に名称が知られている
クスリは大概取り上げられています。
中には普通に売られているサボテンなんかも出てきたりして。
とんでもない生活の経験者ってのは、それだけで立派に
一つの作品たりえることを示していると思う。

「人が知らないような変な知識を持っていたい」みたいな欲求と、
「面白い文章を読みたい」という気持ちの両方を持っている人のツボには
クリティカルヒットすることと思います。