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『空気の底』(手塚治虫)

空気の底 (手塚治虫漫画全集 (264))空気の底 (手塚治虫漫画全集 (264))
(2000)
手塚 治虫

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強化月間ってわけでもないですが、まあこの機会に。
うちにあったのは秋田の豪華版です。収録作品が少し異なります。

60年代末〜70年代初頭、いわゆる「冬の時代」に描かれた作品のひとつ。
青年誌に連載された短編連作集です。
少年誌連載だった『ザ・クレーター』と対をなす作品のようにも見える。
(タイトルも「底」と「穴(クレーター)」だし)
ただし、あちらほどナンセンスなノリはありません。

SF的な世界観を根底に、人間たちの織り成す骨太なドラマを
どこまでもシリアスに描写しています。
主題は「人間の精神の暗部」といったところでしょうか。
劇画の手法を完全に消化する以前の、迷いが感じられる絵柄で描かれる、
暗く救いのない物語の読後感は、ハンパなく重いですが、
手塚氏の短編作家としての職人的な手腕が存分に堪能できます。

余談ですが、最終エピソード「ふたりは空気の底に」の中に
AV(と呼んでいいのだろうか)を主人公たちが見るシーンがあるのですが
それが版によって和モノだったり洋モノだったりするらしいです。
本当にマニア心を刺激する改変が好きな人だなあ…w
ちなみに私が持ってたのは和モノになってました。

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ROCKなテンプレにしてみました。
2年くらい前までの私にはロックなんてロック・ホームでしかなかったなあ。