バンブツルテン

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『モテキ』(久保ミツロウ)

モテキ (1) (イブニングKC)モテキ (1) (イブニングKC)
(2009/03/23)
久保 ミツロウ

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29歳派遣社員、一応非童貞だけど彼女いない暦=年齢。
そんな俺にもモテ期が来た!?
人生で一番好きになった女(1度フラれている)、
元同僚で地味だけど結構キレイでちょっといい感じになりかけた女(彼氏の存在に自らFO)、
趣味の話で盛り上がれる気の合う女友達(互いのモテなさを自虐的に笑い合う仲)から
いっぺんに連絡が来て…どーすんの、俺!むしろどーにかできんのか、俺!?

…というような話です。
イブニングで連載が始まった時は「またダメ男マンガかよーもうご馳走様だよ」と
正直ちょっとだけ思いましたが、恋愛という要素のみに
スポットを当てた形なのが珍しいなーとも思いました。
それが気づけばイブニングで2番目に楽しみにしている作品になってました。
(1番は少女ファイト

考えてみると、青年マンガというジャンルの中で「恋愛」を話の中心に据えたものって
ヤング誌のラブコメ群を除くととても少ないように思われます。
そして、読者が基本的に大人であるはずの媒体でわざわざ「恋愛」を描くからには、
いかに読者の共感を誘うか、また紙一重のところでいかに読者に夢を見させられるかが
ポイントになってくるでしょう。
それをしっかり理解して描かれている作品だと思います。

主人公の藤本幸世は、イケメンではないがものすごく残念な顔なわけでもなく、
気立ても決して悪くなく、趣味の方向はちょっとサブカル寄りだけどキモヲタでもない。
ただ、自分の中の成功体験が少ないために自信が持てず、卑屈になりがち。
そして作中の第4の女・林田によれば、それが今までよい恋愛をできなかった原因らしい。

こういう、いわゆる「モテない人間」のどうしようもない内面描写とか
それをバッサリ斬る分析の鋭さは圧巻というか、
個人的にも耳が痛い部分がありすぎて素直に「うわああ」と思ってしまいます。
フジ君とよく似た経歴を持つ女友達のいつかちゃん(彼氏いない暦=年齢の22歳)にも
いろんな意味で共感を禁じえない。

本誌の方では最近展開に大きな動きがありましたが、
そのまま落ち着くとは決して思えない、ハイテンションなジェットコースター感もこの作品の魅力。
作中で空気と化してきているいつかちゃんにももう一頑張りしてほしいところ。
随所にちりばめられた数多のマンガへの敬意を持ったパロディにもニヤニヤさせられます。
今後も目が離せません。

それにしてもこの表紙のフジ君はBLマンガの登場人物のようだなあ。
成人男性のくせに頬染めすぎだろう!w