バンブツルテン

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2017年を振り返る【マンガ編】

ダラダラしていたら1月も末ですが、今年もまとめておきます。
#俺マン2017 に上げた作品について、個別感想。

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阿部共実『月曜日の友達』

話題作だし、あえて語ることもないという感じですが。
個人的に『大好きが虫はタダシくんの』『空が灰色だから』のインパクトがいろんな意味ですごくて、その後の作品をあまりきちんと追っていなかったんですが、久々に手に取ってみたら思いもよらない方向に進化したというか、裾野を広げていた感があって非常に驚きました。マンガ表現の可能性のひとつが追求されている作品に思えます。

 

売野機子ルポルタージュ』 

売野先生、2017年に出た短編集2点も相変わらずとても良かったですが、「恋愛」そのものをテーマにした近未来SFである本作は、なんとなく新境地っぽい感じがあって注目していました。性とは、愛とは、という問いにも触れながら、抑制された空気の中で静かに静かに進んでいくストーリーの緊張感が心地いい。
連載の継続についてはいろいろあったようですが、移籍の方向で固まったようで良かったです。今後の展開が楽しみ。

 

紀伊カンナ『春風のエトランゼ』

去年は『雪の下のクオリア』を選んでいるんですが、今年も結局このシリーズを選んでしまった。
とにかく綺麗でかわいくて愛おしい時間が流れている作品ですが、「家族とは?」という問いに踏み込んだ最新刊には驚かされました。これから、物語はどんなふうに進んでいくのだろう。
BLコーナー以外の売り場でも展開されていい作品だろうなあ、と思いながら読んでいます。
飯田橋でやってた展示も良かった。

 

石黒正数それでも町は廻っている

祝完結枠というか、お疲れさまでした、ありがとう!の気持ちを込めて。
ミステリ仕立ての作劇、随所に当たり前のように入り込む「すこしふしぎ」な要素、高校生という二度とは来ない時間をいろんな経験を通じて成長・変化しながら毎日を生きる歩鳥たちの生活。それらがすっかり混ざり合った、本当にふしぎですてきで、唯一無二のマンガだったなあ。ずっと大好きです、たぶん。

 

岡田卓也『ワニ男爵』

店頭でたまたま気になって手に取った作品でしたが、これまでに読んだことのない種類の奇妙な読み味が非常にクセになります。
いわゆるグルメマンガっぽい大仰な味の表現は興味深くもそれ自体がギャグ的であり、しかもそれを吟味するのが何故かワニの紳士という設定がもうわけがわからない。そのくせ「シュールなグルメコメディ」で片づけるには妙に抒情的で、なんというか、本当に、不思議な作風です…。好き。

 

入江喜和『たそがれたかこ』

こちらも「おつかれさまでした」枠でもありつつ、完結まで見守れて本当に良かった、良かったね、おたかさん!という気持ちで。
終盤の流れには「そうだったのか!」と驚かされつつも、全10巻を通じて、たかこさんたちの生き様から、いろんなことを学ばせてもらったなあという気がしています。
完結記念のトークライブでも濃い話が聞けてとても楽しかった。

 

 

■川路智代『ほとんど路上生活』

単行本化はまだ先になりそうですが、これは2017しんどいコミックエッセイ大賞だったかもしれないし、2018大賞になりかもしれない。推しておきたいです。川路智代さん。

手塚作品のパロディから出発してまさかの公式作家になったつのがいさんとの同居生活の様子も気になりますが、作品のほうもなかなかとんでもない。
コミックエッセイのレーベルでの連載なので、もちろん実体験がベースなわけですが、なにせ、内容がハードです。この独特の、シンプルでコミカルなんだけどちょっとおかしい、緊張感のあるテンポ、リズム、描線で描かれているから余計にドキドキする。

掲載媒体であるエブリスタ「コココミ」では、ほかに『ねこのとらじの長い一日』『まめしばコ!~の、いっしょう~』『魔夜の娘はお腐り申し上げて』なんかも楽しみに読んでいます(した)。注目しているwebメディアです。

 

■ヨコイエミ『カフェでカフィを』

Twitterで話題になっていたので気になって読んだ作品。
コーヒーをテーマにした小品集、という形式の作品はいくつか思い当たるけれど、それらが短編映画のような種類の完成度を持っていることが多いのに対して、この作品はマンガという形式に対する実験の要素が垣間見えて面白い。
イラストレーション的な洒落た画風だし、発表媒体がメジャーな女性誌ですが、マンガマニア的に興味をそそられる作品でした。

 

雨瀬シオリ『ここは今から倫理です。』

不思議なタイトルに惹かれて手に取った。「倫理の先生」を主人公/狂言回しに据えた教師ものという、とてもユニークな作品です。
教員と生徒のドラマとしてシンプルにグッとくるものがあるし、各話の構成もいろいろ工夫されていて面白い。先生のキャラクターも気になります。
倫理の授業、私も好きだったなあ。

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2017年、個人的にはあまり新しいものにバランスよく目を配れなかった年でした。
今年はもっとアンテナを尖らせていきたいな。

 

://twitter.com/fum_sz/status/947458187191468032