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『四丁目の夕日』(山野一)

四丁目の夕日 (扶桑社文庫)四丁目の夕日 (扶桑社文庫)
(1999/12)
山野 一

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別冊宝島の『日本一のマンガを探せ!!』に掲載されたこの作品のレビューに
こんなような文がありました。(うろ覚えです)
「世界一不幸な人を想像してみてほしい。
 たぶんあなたの想像上の人物は、この作品の主人公より幸福である。」
これがこの作品の全てかもしれません。

小さな町工場を営み、貧しくも幸せに暮らしていたある一家を突然襲う不幸。
不幸が不幸を生み、連鎖的により酷い状況に追い込まれていく主人公。
作者の視線や筆致はあくまでも冷静で、主人公本人の壊れていく様や
周囲の環境の悪化する様子を淡々と描き出しています。
いわゆる「神の視点」ってのはこういうのを言うのだろうか。

不幸不幸と書いてますが、流行の「泣けるマンガ」ではありません。
むしろ涙なんて一滴も出てこない。背筋が凍り、吐き気すら催す。
ラストシーンに見られるほんの少しの救いにすら、主人公の受難を思えば
ひきつった表情にならざるをえません。

大げさじゃなく、本当に死にたくなるマンガです。
でもそういう作品はえてして生きる気力がわく作品にもなり得ます。