バンブツルテン

観たり読んだり聴いたり行ったり考えたり

『魔人探偵脳噛ネウロ』(松井優征)

魔人探偵脳噛ネウロ 1 (1) (ジャンプコミックス)魔人探偵脳噛ネウロ 1 (1) (ジャンプコミックス)
(2005/07/04)
松井 優征

商品詳細を見る

主人公の脳噛ネウロは、悪意による『謎』を食糧とする魔人。
ひょんなことから(死語だろうか)ネウロと出会ってしまった、
準主人公の桂木弥子は、ネウロが安定して『謎』を得るための傀儡として
女子高生探偵を演じる羽目に…というような設定で、
3〜7話程度で一つの事件を扱うスタイルでした。
一応既存の推理ものの体裁を踏襲してはいるものの、
一方では思いっきり既存の推理ものを笑い飛ばしてます。
何しろ読者に犯人当てのヒントはほとんど与えられず、
ネウロは「魔界777ツ能力(どうぐ)」なる不思議アイテムを駆使して
推理を行い、さらに『謎』が解かれた瞬間に放出されるエネルギーのみが
ネウロの食糧となるため、犯行の動機には興味を示さない。
90年代後半の推理マンガブーム期に小学生だった身としては、
いろんな皮肉が痛快でたまりませんw
作者自身が「推理物の皮をかぶった単純娯楽漫画」と言うだけあって
トリックもかなりいい加減なものが多いようですが、
個人的には元々ミステリが苦手なので少しも気になりません。

「スタイルでした」と過去形で書いたのは、少し前から長篇シリーズに
入ってきている部分があるため。
といっても、ジャンプにありがちな急激な方向転換とかではなく、
きっちり伏線を張って、それを回収して、同時に新たな伏線を張って…と
非常にまっとうな形で、自然に長篇化しています。
それにともない、個々のキャラクターにも様々な変化が見られるようになり
ますます目を離せない展開になっております。

読者の目を惹きつけて離さない、あまりに個性的なキャラクターたちも
この作品の大きな魅力の一つですね。
レギュラー陣も十分濃いですが、何といってもそれぞれの事件の
犯人キャラクターの濃さは、従来の推理マンガの比じゃないです。
通常のキャラクター人気投票とは別に「『犯』人気投票」が行われたほど。

画風としては、お世辞にも綺麗で見やすい上手な絵ではないですが、
この人でなければ出せないであろう迫力があります。
コマ割りにも凝っていて、マンガだからこその魅力に満ちた絵だと思います。

絵に好き嫌いがない人なら是非読んでもらいたい作品。
これだけしっかりしたストーリーと独自性を持ち合わせた少年マンガ
滅多にないと思います。