バンブツルテン

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「おまけのいちにち(闘いの日々)」(筋肉少女帯)

ツアーが始まる前に、自分用に感想をまとめておきたくなり。

ナタリーの全員インタビューで橘高さんが語っていたこと。

natalie.mu

「『最後の聖戦』に続くアルバムみたいにになればいいなと思ってた」
この言葉を反芻する今日この頃です。

以下、1曲ごとの感想をざざっと。

  1. 大都会のテーマ(TVサイズ)
  2. レジテロの夢
  3. 混ぜるな危険
  4. 球体関節人形の夜
  5. 枕投げ営業
  6. LIVE HOUSE
  7. 別の星の物語り
  8. 私だけの十字架
  9. 大都会のテーマ
  10. 時は来た
  11. おわかりいただけただろうか
  12. S5040
  13. 夕焼け原風景

1. 大都会のテーマ(TVサイズ)

1曲目は、テレビドラマのテーマ曲のカバー。
これはいわゆる、「ステーシーの美術」における「FIST OF FURY」であり、「UFOと恋人」における「ひまわり」であり、「レティクル座妄想」における「愛のためいき」であり、もっと言うなら「I STAND HERE FOR YOU」における「青春の蹉跌のテーマ」。

上記のどれも、私は原曲も映画もいまだに知らずにおり、「筋少の(オーケンの)アルバムのテーマになっていた曲」として、それぞれ強烈に自分の中で印象付けられている。

今回の「大都会」も、ドラマも原曲も知らず、初めて聴いた。
同じことのはずなんだけど、上記の曲たちと比べて正直、あまり印象に残らない。
やっぱり、オーケンの語りが入っていないからなんだろうなあ。

このあたりは、メンバーと同世代ないし少し下、くらいであればこそ共感できるものがあるようなので、うらやましい気持ちにもなる。
ただ、ギター・マガジンのギターズインタビューを読んだことでちょっと違った角度から聴けて、そこは非常に面白いなと思っています。

Guitar magazine (ギター・マガジン) 2015年 11月号 [雑誌]

Guitar magazine (ギター・マガジン) 2015年 11月号 [雑誌]

 

 

2. レジテロの夢

…からの、橘高メタル先制パンチ! かっこいい!
ロディアスさよりも激しさが前面に出ているのが、橘高さんの曲にしてはちょっと珍しいかも? というのが第一印象。
終盤の展開たまらん、が第二印象。
オーケンのいわゆる「フェロモンが出る」声域ですね。
「レジテロ」って、コンビニ店員がテロでも起こす歌なのかと思ってたら、レジスタンス・テロリストの略であった。

 

3. 混ぜるな危険

この位置、勢いに弾みがついてイイネ!
そして、改めてアルバムの流れの中で聴くと、さすがタイアップ曲だなあというキャッチーさが際立つ。
コンペ上手おいちゃんの面目躍如ですね。
オーケンは「コンペに出すのに勇気がいる」って言ってたけど。笑
派手で、煌びやかで、今の筋少の魅力全部入れって感じの1曲。

 

4. 球体関節人形の夜

オーケンふーみんコンビが野水いおりさんに提供した楽曲のセルフカバー。
超ヘドバン曲らしいと聞いてはおりましたが、なるほどこれは!と納得。
とはいえ、構成もメロディも結構ひねられているので
一発でガツン!と来る感じではなかったなあ、個人的には。
何度も聴いてるうちに、うおおおおたまんねえええ!!ってなってきた。
こないだのライブではサビでタオル回しが発生していたが、あれ、定着するんだろうか。なんだか曲のイメージに対して健康的すぎるフリな気がするけど(笑)。

 

5. 枕投げ営業

もうタイトルからして意味がわからない。
1フレーズ目が「あたしは! 売れてない! 焦るわ! 枕で大逆転!」。
は? え? と思う間もなく、とっても明るくポップなメロディとともに、売れないアイドルちゃんがおそらく大御所のプロデューサー先生に枕営業をしかけるも「枕営業もいいけど枕投げってのどう?」と逆に提案され、夜を徹してガチの枕投げに興じる…という狂気の(笑)物語が、猛烈な勢いで進んでいく。
私は「枕投げ」「そば殻」「おたべ」という単語が歌詞に出てくる楽曲というものを生まれて初めて聴いたし、たぶん今後もほかに聴くことはないでしょう。

サビの〆の「枕!」コール、間奏のフレーズ、そして歌詞の驚きの展開…
いろんな意味で、このアルバムで最も「楽しい」曲はコレでしょう。
オーケンも推し曲にしているようで、何回かラジオでかけてました。

今をときめくSEKAI NO OWARIのDJ LOVE氏もこの曲がお気に入りだそうだよ。

あとこの曲、少女漫画家さんに漫画化してほしいなーと思った。
すんごい目に浮かぶんだよ~。

 

6. LIVE HOUSE

ハイパーおいちゃんタイムが止まらない。
昔の「筋少ちゃん祭り」の映像が現在に残っているおかげで「♪ギターケースに今夜は君を詰め込んで〜 Oh Baby〜」のくだりが、ファンの間では超有名な1曲。

(この映像で、「くそ〜っw」て感じで笑いながら半ばヤケクソ気味にジャッジャッジャッ!ってギターを弾くおいちゃんが大好き…かわいい…閑話休題

何が驚いたって、Aメロからいきなりおいちゃんが歌ってることにまず驚いた。
あれェ!? ってなってたらオーケンも歌い出して、あまつさえハモりだしたからもう。もう…!
今回は限定盤の特典に楽器隊VoバージョンのCDもついてて、つまりおいちゃんひとりボーカルによる「LIVE HOUSE」の音源も存在する上にこれは、おいちゃんクラスタとしてはたまらんです。しぬ…
このふたり、ハーモニーとして、声の相性がいいと思う。
ライブではおなじみの「青ヒゲ」とか、「Guru」「蜘蛛の糸」のコーラスも好き。

バンドブーム以前、ビートパンク以前の時代の空気感をギュッと濃縮したような、そんな4分間。
(リアルタイムで知ってるわけじゃないので、もちろんイメージですが)

しかしおいちゃんってやっぱり、どう考えてもリア充側の人だよなー。笑
おいちゃんがナゴムに関わりを持ったことは、すばらしい歴史のいたずらである。

 

7. 別の星の物語り

AORっぽい、と橘高さんが言っていた。
個人的には、かじってみたけどよくわかんなかったジャンル。
(ジョージのソロ4th「EXTRA TEXTURE」がよくそう評されてた記憶。
 このアルバム、ジョージソロで唯一ほとんど聴いてない)
でも、この曲は歌詞が無性に泣けてしまって。好きだなあ。

 

8. 私だけの十字架
9. 大都会のテーマ

この2曲は1と同じ感覚。正直、あまりピンと来ていない。後追いファンとしての壁を、初めて感じているかもしれないなあ…
ギター・マガジンのインタビューを読んで、ふむふむと興味深く聴いています。

 

10. 時は来た

そしてここへ来て、うっちーの大作。
「某ハードロックの名曲(DEEP PURPLEの「Space Truckin'」のようです)に、フォーリーブスの歌が乗ったらどうなるかと思って」という、それ華吹雪や! 的発想で作られた楽曲らしい。
「バンドのライブだと 思わせてたが 嘘ーーーーーー!!!!」
\嘘!/\嘘ダヨ〜ン/\ウヒャッヒャッヒャ〜〜〜ケラケラケラ/のインパクトに笑いが漏れる。

歌詞は、わりと「筋肉少女帯」あるいは「大槻ケンヂ」のパブリックイメージというか、基本的な思想をわかりやすく表現しているなあと思った。
そして、ラストの"「敵はどこ? 敵は誰?」 最初にわかっとけ"というフレーズがとても好き。
敵が何なのかわからないままにルサンチマンを募らせているけど、きっと本当は存在しない敵に立ち向かっているんだろう、という皮肉さは、「俯瞰の人」オーケンらしく、アジテーションソングなのに最後にちょっと冷静になってしまうというのがリアルだ。

歌詞カードに載っていないオーケンの語り、聞き取ってみたがこんな感じかな↓
「今どき誰が音楽などで商売をしようと思うものか
 これはライブなどではない! 
 我々をないがしろにし、搾取する輩を倒すための集会だ!」
「時は来た!」「我々は宇宙の中心だ!」
「いや我々こそが宇宙そのものなのである!」
「私は宇宙だ!」
「時は来た!」「時は来た!」「タイム・ハズ・カ〜ム」

ライブではメンバー紹介とかになるんだろうな。
ちょっと残念だけど、生で聴くのがかっこいい曲だと思うので楽しみでもある。

 

11. おわかりいただけただろうか

曲名が出た時点で、こちらもかなり何だそれソング(笑)だったわけだが、フタを開けたら、わりかしポップかつ橘高さんらしい1曲であった。
元々は「うしおととら」タイアップの第二候補だったらしく、言われてみればなるほど、アニソンっぽいかもしれない。

先日の橘高さん30周年祭りでは、橘高さんがボーカルを取りました。
オーケンが歌うとおわかりいただけなさそうなのに、ふーみんが歌うとおわかりいただけそうなのが面白かった。

 

12. S5040

アシッド筋少、サイケ筋少
60年代サイケな雰囲気はもともと好きなはずなんだけど、この曲はちょっと自分の中に落とし込むのに時間がかかった。びっくりしちゃったのかな。
ジョージのインド曲みたいな感じかもしれぬ。あれも慣れるまで??って感じだった。俺よく筋少ビートルズ比べるね…(©オーケン
今は大好きです。浮遊感がたまらん。

 

13. 夕焼け原風景

ゆーったり、ゆったりしたテンポに優しいメロディ、泣きのスライドギター。
びっくりするほど衒いのない、朴訥としているとさえいえそうな、ピュアな歌詞。
ある意味で「筋少らしくない」曲なんだけど、すごく「オーケンらしい」曲のような気もする。

この2人は「きらめき」の2人なのかもしれないなあなんてふと思った。
「愛など存在はしない この恋もいつか終わるさ」と歌っていた彼らの、過去なのか未来なのかは、わからないけれど。

「現在…過去…未来…」ってぼそぼそしゃべってるの、何を話してるんだろうな。

 

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最初はとにかく、「筋少らしくない」アルバムな気がする、と思った。
もっと言うと、個々の楽曲の一つ一つが「筋少らしくない」と。
先んじて制作された「混ぜるな危険」と「球体関節人形の夜」、
「枕投げ営業」「おわかりいただけただろうか」あたりを除いて、
耳慣れないというか、「想像だにしなかった」方向性。

でも決して聴きたくないわけじゃない。
毎日毎日、ザワザワしたものを抱えながらこの2週間ヘビロテした。

結果、たどり着いたのは、私は「筋少の音楽の多様性が好きだ」と言うわりに、いつのまにか強固な「今の筋少」のイメージを自分の中に持ってしまっていたんだなあ、という気づきでした。
それはたぶんまさに、「ゴージャス・エンタテインメント・ハードロック」。慣れなのか、刷り込みなのか。この賑々しい音楽性こそを「筋少らしさ」として捉えるようになってしまっていたのだなあと。
でも確かに、活動休止以前の筋少は、そういう面もありつつ、ファンですらびっくりするようなヘンテコな曲をいっぱい作っていたじゃないか、と。
そう、このザワザワ感、ファンになったばかりの時に旧譜を夢中で集めて聴いていっていた時の感覚に近かったんです。

そこで冒頭の橘高さんの言葉がピンと来た。
「『最後の聖戦』に続くアルバムみたいにになればいいなと思ってた」

今度こそ本当の本当に、筋少は「再結成バンド」のフェーズを抜け出して、「筋肉少女帯」というバンドの本来の立ち位置に戻ったのかもしれない。
筋少」というブランドに対するメンバー各自の敬意と、ぼちぼちみんな50歳を迎えるそれぞれの滋味深い人生観と、ますます盤石の演奏技術を備えて。

それから…タイトルの「おまけのいちにち」について。
これ、「断罪!断罪!また断罪!!」収録の「おまけの一日」との関連はたぶん特にない(エッセイ集の「おまけのいちにち(その連続)」との連動性が主のようだし。楽曲の「香菜、頭を~」とエッセイ集の「神菜、頭を~」に特に関連がないのと似たようなことだろう)んだと思う。思うけど、そのうえで、「断罪!~」の頃の「おまけの一日」が虚しさに満ちていたのに対して、今の「おまけのいちにち」は、何てキラキラした、大切なものとして扱われているのだろう、と、勝手に感慨深いものがありました。

私の人生の「おまけのいちにち」が筋少とともにあることを、嬉しく思います。

えーいまとまらん! あとでもうちょっと整理しよう!
とりあえず新譜ツアーが楽しみです!